中島省三の湖畔通信

青空の思考

2022/06/02

デジカメのファインダーの中は青色世界だ。少年時代から青色が好きで何時も空を見上げていた。近くに在った練兵場から離陸した、赤トンボと言われる少年航空兵が練習する中間練習機が青空で宙返りをしていた。其の青空から77年の時が流れた。今日の青空は空中戦の練習する飛行機など見当たらない真っ青な青空をスマホで撮ってFBにアップした。その青空フォトを見て、友人のHさんが素晴らしいコメントを送ってくれた。其のコメントは「もはや物は存在しない!?」であった。改めてパソコンにアップした青空を見て、僕の青空の思考はと考えた。毎日、毎日、湖岸に佇み琵琶湖と空を見上げ何回デジカメのシャッターを切って写真を撮ったことかと振り返るも何も答えは帰ってこない、今日も青空が広がるだけで何も変わりはしないと、また自転車を出して湖岸へ向かった。湖岸に佇んで青空を見ているとアーサーCクラークのSF小説「地球幼年期の終わり」を思い出した。そしてHさんのコメント もはや物は存在しない を思い浮かべ青空を見た。

映画が熱く語られた時代・・・

2022/06/01

今日も「第一藝文社をさがして」(早田リツ子著)を少し読んだ。僕の生まれる前の大津で出版社を立ち上げた、中塚道祐が芸術に関する本を出版していた話を此の本を通じて初めて知った。1930年代と言えば日本が戦争へと突き進んで行く時代で、国家権力が個人の自由な表現を厳しく取り締まる中で芸術家が苦労しながら人間として製作活動をする様子が表された第三章映画出版へ、は映画に関わる人達の映画に対する熱い気持ちが伝わってきた。季刊「シナリオ研究」では十人会が中心となり第一藝文社から刊行されたことや、厳しい映画批評など映画芸術に対する真剣さが伝わってきて、其の時代の映画を見たくなった。僕が戦前の映画で見たのは山中貞夫監督の「人情紙風船」だけだ。本の中では伊丹万作、伊藤大輔、溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男、稲垣浩、ら名監督の名前が出てくるが戦前に制作された映画は見ていないが、厳しい検閲を受け出来上がった映画は監督の思いがどれだけ表現できたのかと想像するだけだ。検閲を受けながらも映画人として庶民の気持ちを表現したのではと思いながらページを繰った。中塚道祐の協力者の北川、杉本氏のその後にも話を進める内容は興味を持ちながら楽しく読めた。第一藝文社が京都へ移った状況でも場所まで分かり、数年前に何気なく撮影した光華寮が中塚氏が拠点とした北白川の洛東アパートメントと分かり、此の本に親しみを感じた。今日は障害児教育の先駆者田村一二さんの名前がでてきた、そして「手をつなぐ子等」を書かれたことも知り、そして稲垣浩が監督した映画「手をつなぐ子等」をテレビで見たことを思い出したりで楽しい読書が出来た。

再読したい小説

2022/05/31

もう一度読みたいと思っていた佐藤泰志の「海炭市叙景」を数日前に読み終えた。佐藤泰志は何回も芥川賞候補作に選ばれるも賞には届かなかった。本に記された経歴では1990年に自殺とあった、小説は明るくは無いが淡々と綴られる名も無き人の物語は何気ない生活の中で生きる人物像が等身大で親しみを感じ、何処の町にでもいる人達が主役の小説は再読して佐藤泰志の素晴らしさを再認識した。映画化された作品も何本か見たが残念ながら「海炭市叙景」は見ていない気になる作品だ。短編で構成された物語を脚本家がどのような物語に組み立てているのかと想像しても楽しくなった。映画は小説と違い、物足りなさも感じるが「オーバーフェンス」は楽しく見られた。佐藤泰志の小説は映像が立ち上がってきて映画を見ているような気分になるから不思議だ。再読した「海炭市叙景」第二章の6黒い森 では開発が進む郊外を背景に家族内で起きる日常を描いた短編は身近で誰でも起きる物語だ。何でもない日常を短編小説に出来る作家が何故、命を・・と考えながらテレビから流れる直木賞作家の全国行脚へ物々しく出発するニュースを見た。

高積雲が広がる空を見て

2022/05/30

梅雨前線の北上で、お天気は悪くなると思っていたら琵琶湖上空は青空に高積雲(羊雲等)が広がり空の美術館には大作が展示された。湖岸に佇んで空を見上げていると、飛びたくなるのは飛行少年?の血が騒ぐからだ。目を瞑ると50年前の記憶へと・・僕はパイパースーパーカブPA18のコックピットの中で、操縦桿を右手に握り、左手でスロットルレバーでエンジンの回転数を2300回転に調整、高度3000フィートの琵琶湖上空で急旋回に入ろうと目標を定め、ライトクリア、レフトクリアと視界の安全を確認して操縦桿を右に傾けると同時に右足でラダーペダルを軽く踏むと機体は45度に傾きPA18はライカミング135馬力のエンジン音を響かせ軽やかに旋回姿勢に入った。旋回計のボールは真ん中に、機体は滑ること無く正規の旋回姿勢だ。前方の景色は45度の傾斜のまま、旋回を続けている、旋回中は微妙なエルロン、エレベーター、ラダーを巧みに操作して最初に定めた目標が見え始めると旋回終了準備だ、呼吸を止めて操縦桿を左へ倒すと同時に左足でラダーを強く踏む、機体は目標を前方に捉えると360度の急旋回が終了すると同時に自分の操縦する飛行機の後流に入るとPA18は少し身震いを感じると高度一定で正規の急旋回が出来たことを証明してくれると、パイロットには言い知れない充実感が体全体を包んでくれた記憶が積雲の彼方に浮かんだ。もう飛ぶことはないと雄大な空の美術館を眺めていると50年の時間が光陰に感じられた。

追 急旋回中、体には心地良いGが体にかかるのも飛行機ならではだ。

第一藝文社をさがして?

2022/05/29

昨日、暑くなって来たので赤ワインよりも白ワインをと、近くの小川酒店へ出かけた。お店に入りワインに詳しいHさんを呼んでもらった。ワインを注文する前に、本の話が先になった。其の本は大津の桝屋町に在った出版社の話しだと、本を少し説明されて、差し出された本の題名を見ると、第一藝文社をさがして(早田リツ子著)が目に入った。僕は題名に、何何を探せと付く題名には弱く、映画、例えばヴィヴィアン・マイヤーを探して(アメリカ映画2013年)などは直ぐに見たことを思い出しながら手に取った。でも内容はローカルで面白くなさそうだが題名につられて借りてしまった。予想では大津で起きる物語などと少し軽く見ながら読み始めると、桝屋町の昔の様子が浮かんできた。物語は昭和10年頃に大津の桝屋町で出版社を立ち上げた中塚道祐の話に引き込まれ第一章を読み終えた。時節は軍靴の音が大きくなりかけたころの大津の1930年代の話しで、まだ其の頃は大津でも、芸術や文化が華やいでいた時代の中で、真野村の旧家に生まれた中塚道祐が華道や詩に興味を持ち青春時代を過ごす物語は僕の生まれる前の豊かな時代を知るには良い物語だと興味を持ちながら今日も続きを少し読んだ。今の寂れた大津の町では想像できないほど文化や芸術が盛んだった事を知った。特に華道は男の趣味で流派も多く芸術として高く評価されていたことも分かり少し驚いた。中塚道祐は詩人の北川冬彦や作庭家・華道家重森三玲などにも師事,交遊もあり、大津で立ち上げた出版社、第一藝文社が芸術関係の豪華本を世に出してゆく物語に僕は今まで大津は何をやっても駄目な処とおもっていたが大津も芸術や出版においても存在感があった時代もあり少し誇りも持たなければと思いながら本を閉じた。

今日は朝から青空だ、そして雲一つない青空が大津を青色に染めた。青空を眺めて大津にも文化芸術が栄えた誇りが空に映っているのではと青空を探した。

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