トンボの死

 ある日の朝乾いた洗濯物をたたんでいるとオニヤンマがタオルの中から、俺は まだ生きているぞと、羽を振るわせた。久しぶりに間近くで見る、トンボは少し 元気が無くすぐに捕まえる事ができた。美しい透きとおる羽はまだ飛行する ことが可能だと思った。それではと庭に出てトンボをはなすと、元気無く失速 して地面に落ちた。拾い上げ小さな木の枝に止まらせた。元気になればテイク オフできるだろうと、その場を離れた。そして1日がすぎ枝を見ると、トンボ は手を合わして祈っているような姿で死んでいた。じつに静かな死だ。遠くか ら見れば、木と一体となっているように見える。なぜか朝日新聞、日曜判9月 24日,明恵上人樹上座禅像の紙面を読み返した。10月3日現在もトンボは木の上 にいる。