雨の音

 早朝、午前五時、町はまだ眠りの中、雨音が心地よく私のまだ眠っている脳をやさしく刺激してくれる。雨音にまじり時々 ポン、ポンと雨だれが軒下のビニロンのテントにリズムをとりながら落ちている。幼年の頃の記憶が蘇えってくる。家の中でもいろんな音が聞こえたなあ、天井 を走るネズミ音、ヘビがザア、ザアと這う音、夏の蚊帳のそとをとぶモスキートのまるでブーンと飛行機のような音。夏の終わりにはコオロギの鳴き声その声を 聴くと、よく祖母が、ボッコつずれ、つずれ、と冬仕度をするようコオロギ知らせてくれているのだとよく私に語ってくれた。今は冷蔵庫や電機器具からの低周 波が部屋中を駆け回っている。その音で体調を崩す人ガ多いとか。朝、表戸を開けるとユスリカの死骸の山、そんな情景を見ながらいつものように三井寺さん へ散歩に出かける。観音堂ちかくにくると、パラパラと雨音に似た音が、見上げるとシイの木より秋風に吹かれてシイの実が落ちてくる音だ。私は日吉丸と蜂須 賀小六との豆を使い、雨音に似せ小六を驚かせた話を思い出した。参道では数人の人がシイの実をなつかしそうに拾っている。そんな情景を見ながら祖母が炒っ てくれたシイの実の白い実と香ばしいにおいが思い出されてきた。 また、パラ、パラとシイの実の落ちる音がした。

2000/11/17