師走に入り気ぜわしく世の中が動いている。暇な私は友人に誘われ北海道へスキーに出かけた。その日は寒波でマイナス17度と顔にあたる雪と風はあまりに も冷たすぎた。でもパウダースノーでスキーは軽やかに雪面を走った。満足感で久しぶりに頭の中までリフレッシュできた。そして友人と町へくりだした。チエ ン店らしき居酒屋に入り冷えた体を中から温めるべく熱燗の酒とホッケ、その他数種の肴を注文する。待つ間もなく次から次へと料理が運ばれお腹のすいている せいもあり、あっと言う間にたいらげた。そして最後に焼きおにぎりを注文、二三分でテーブルに届いた。私が想像していたおにぎりとはかけ離れたものだっ た。ふりかけご飯をにぎったようなもので、上皮だけ少しコゲメのついたやわらかく歯ごたえのなさは現代子向きにおもえた。三日目の夜は少し足を延ばしスス キのへ出かけた。ビルの角に古ぼけた戸が。見る限りそんな綺麗な店ではないので一瞬入るのをためらった。戸を開けると店内はすすけたような天井、カウン ターには常連客が三人座っている。大きな松を利用した、直径一メートルはある火鉢には炭があかあかとイカッテいる。そのうえには油で黒くなっている網が。 そして目のパッチリした美人の女将が。イラッシャイと小気味よい声が入るのをためらった気持ちをふりはらった。そして、イカ、シシャモ、ホッケを注文。大 きな網の上にのせられ女将の手際よいさばきで焼かれて行く。イカがまるくふくらみ飛行船のようだ。シシャモはアルミホイルの枕をして焼かれている。何故か と聴けば、頭が焦げるからと女将から返事が返ってきた。炭火に照らされた女将の顔が美しくも色っぽくも思えた。そして焼きおにぎりを注文。目の前で焼かれ る白い飯のおにぎりだ。ゆっくりと時間をかけ炭火でこんがりと醤油がぬられ、また焼かれ香ばしい匂いが食欲をそそる。物が作られる課程を目の前にしながら 酒を飲み、そして出来あがったものを食す。初日に寄った居酒屋はコンピュターのようですべてがブラックボックスのなか。調理される物そして作る人の顔が見 えない。世の中政治も含めなにもかもがみえないところで処理されて行くのかなあと、美味しい焼きおにぎりをほうばりながらそんな事を考えた。テレビがまこ としとやかに社会はITからIPへと変化すると。でも私はあの焼きおにぎりがすきだ。女将、美人だったなあ。ヤッパリ俺アナログで行こう。
2000/12/20
追: お酒と食事は友人であり先輩のUさんにご馳走になりました。持つべきものは友達かな。