動く宝石

 6月27日、つゆの晴れ間私は散歩に三井寺の境内へ向かった。私が境内を毎日1回歩くようになってもうすぐ1年だ。習 慣とはおそろしいものだ、雨、雪、風をものともせず時間がくれば家を出て歩いている三井寺へと。もう新緑の季節は過ぎ木々は深い緑へと変化している。総門 をくぐり桜の葉の茂るトンネルの石段を駆け上がる、モチロン息を切らせながら。ウグイスの鳴き声に励まされ、そして観音堂。休む間もなく展望台へさすが梅 雨の蒸し暑さで顔から汗が落ちる。石段に汗が模様をつける。ものの気配。トカゲが私の前を横切る。少し驚き足を止め見送ると、トカゲは石垣の方へ。縦縞の 美しい細い体型、メタリックな輝き、トカゲがこんなに美しい生き物とは。幼い頃と言えばトカゲのシッポを切ったりする事ばかりで、観察力もなく弱い動物を いじめていただけの自分をはずかしく感じた。近年、私の庭で見かける事はなかった。それゆえ久しぶりに見たトカゲは美しくそして幼なじみに会った様な懐か しさを感じた。まだ身近なところで自然が残っている幸せと今日出会えた。宝石の輝きをもつトカゲに感謝しながら深呼吸。展望台から見る大津の町は高いビル が景観を遮っている。比良連峰の眺めも台無しだ。もう一度深呼吸。一陣の風がウグイスの鳴き声。動く宝石にまた出会えるかな。

2001/6/28