真夏の夢

 三日坊主と幼い頃から父や母から言われた私が三井寺の境内を散歩するようになって一年が 過ぎた。温暖化のせいかうだるような暑さの毎日。習慣とは恐ろしいもので時間がくると三井寺へ出かける。石段の桜のトンネルを私は蝉時雨のシャワーを浴び ながら展望台まで駆け上がる。そ して深呼吸。眼下には土用の朝曇りでどんよりとした空の下、琵琶湖と近代化の進む大津市街が暑さに耐えている。石段を降りようと足下に目をやると、体長5 センチ程のトカゲの子供が素早く石垣の隙間に逃げ込んだ。このまえみた美しいトカゲの子供だろうか、そんな事を考えながら参道を歩いていると、いろんな音 が私を楽しませてくれる。ブーンと飛行機の様な蜂の大群、森の中からは小鳥達の声、木々の間をすり抜けるカラスの見事な飛行術、そして蝉の大合唱が夏の暑 さを持ち上げる。でも時折木立の中から涼しい風が汗ばんだ体を冷やしてくれる。そして私の短い20分の散歩が終わりまた平凡な一日が始まる。でも今日は 違った。何万年後か何千年後熱帯化した三井寺の境内を散歩していると、5メートルはある巨大なトカゲ石段をふさいでいる。きずかれないように森のなかえは いると黒い翼長3メートルはあるカラスが私に襲いかかる。必死に逃げる。そして大きな石にけつまずきころぶ。なんとそれは2メートルもあるゾウガメ。そこ で夢は終わった。地球の温暖化が進むなか私達の暮らしは、そんな事を考えながら境内を歩いていると森の中からアーアーとターザンの声、そらを見上げるとカ ラスが夏空をかすめた。

2001/7/30